はじめに
第2回では、去年の夏にシキミ苗を大量に枯らしてしまった失敗について書きました。
- 寒冷紗を直接かけてしまったこと。
- 白い寒冷紗では遮光が足りなかったこと。
- 強度不足の支柱で張った結果、強風で倒れてしまったこと。
- そして何より、目先のコストを優先したことで、結果的に大きな損失につながってしまったこと。
去年の失敗を振り返ってみると、
今年の遮光設備は「とりあえず張れればいい」という考え方ではダメだと、はっきり分かりました。
では、今年はどんな遮光設備にするべきなのか。
今回は、去年の失敗を踏まえて、
最終的に「単管パイプ+ワイヤー」で作る方法に決めた理由 を整理していきます。
① 去年の失敗から見えたこと
まず、去年の失敗から見えてきたのは、次の4つです。
- 直接かけるのはダメ
- 白い寒冷紗では足りなかった
- 強度不足では倒れる
- 目先の節約は損失につながる
言葉にするとシンプルですが、実際にはかなり重い教訓でした。
寒冷紗は、ただ植物の上にかければいいわけではありませんでした。
苗木との間にきちんと空間をつくり、風が抜ける構造にしないと、逆に熱がこもってしまいます。
しかも、シキミの消毒や草取りのために、寒冷紗の下は作業スペースを確保する必要があります。
また、遮光資材についても、
「光を通したほうが生育にやさしいのでは」と考えて白い寒冷紗を選びましたが、結果としては遮光不足でした。
さらに、簡易的な支柱でその場しのぎに張った寒冷紗は、強風で倒壊。
結局、安く済ませようとしたことが、苗木の枯死というもっと大きな損失につながってしまいました。
つまり去年の失敗は、
遮光・通気・強度・コストの考え方が、全部中途半端だった
ということだったのだと思います。
② 今年の遮光設備に必要な条件
去去年の反省を踏まえて、今年の遮光設備に必要な条件を整理すると、次のようになりました。
- しっかり日差しを遮れること
- 風が抜ける空間があること
- 消毒や草取り、収穫のための作業スペースがあること
- 強風でも倒れにくいこと
- 台風接近時に回収しやすいこと
- 部分補修や張り替えがしやすいこと
- 現実的な費用で作れること
まず大前提として必要なのは、真夏の日差しをしっかり遮れることです。
去年はここを甘く見てしまった結果、暑さ対策として中途半端になってしまいました。
ただし、単に遮ればいいわけでもありません。
寒冷紗を植物に近づけすぎると、熱がこもって逆効果になる可能性があります。
そのため、苗木の上に空間をつくり、風が抜ける構造であることも重要です。
さらに、消毒や草取り、収穫といった作業を考えると、人が通れて管理しやすい高さも必要になります。
もちろん、畑に設置する以上、強風への耐久性も無視できません。
屋外設備は、立てばいいのではなく、風に耐えられる構造であることが必要です。
また、台風が接近するときには、さすがに寒冷紗を畳む必要があります。
そのたびに大がかりな作業になると現実的ではないので、できるだけ簡単に広げたり畳んだりできる構造が理想です。
加えて、寒冷紗は一度張ったら終わりではありません。
今後の張り替えや補修まで考えると、壊れたときに全部やり直しになる構造は避けたいところです。
そして最後に大事なのが、現実的な費用で作れること。
どれだけ理想的でも、予算的に無理なら継続できません。
つまり今年の遮光設備には、
「遮光できる・風が抜ける・強い・畳みやすい・直しやすい・現実的」
この6つが必要だと考えました。
③ 候補にした方法
この条件をもとに、今年はどんな方法で寒冷紗を張るかを考えました。
候補にしたのは、次の3つです。
- 【不採用】イボ支柱+鉄筋補強 または メッキパイプ
- 【不採用】単管パイプ+寒冷紗
- 【採用】単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗
【不採用】イボ支柱+鉄筋補強 または メッキパイプ
まず最初に考えたのは、去年も使ったイボ支柱をベースにして、鉄筋で補強する方法、あるいはメッキパイプを使う方法です。
イボ支柱はホームセンターでも手に入りやすく、価格も比較的安いため、簡易的な遮光設備としては取り入れやすい方法だと思います。
ただ、去年実際に使ってみて強く感じたのは、強度面の不安でした。
実際には、イボ支柱のそばに鉄筋を差し込み、添え木のように補強することで、以前よりは折れにくくなりました。
そのため今年は、鉄筋で補強する方法や、最初からメッキパイプを使う方法も候補として検討しました。


ホームセンターでも鉄筋やメッキパイプを比較してみたのですが、
ホームセンターでも鉄筋やメッキパイプを比較してみたのですが、そこで気になったのが長さの問題です。
3mのメッキパイプや鉄筋は見当たらず、2mの長さでは地面に埋め込む分を考えると、消毒や草取りのための作業スペースを十分に確保できないと判断しました。
遮光できても、作業する空間がなければ管理がしづらくなってしまいます。
さらに価格も確認してみると、メッキパイプは思ったほど単管パイプとの差がありませんでした。
候補になった資材を、長さと価格の面から整理すると次のようになりました。
価格の比較一覧
| 長さ | 種類 | ナフコ | コメリ | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 2m | 単管パイプ(1.8mm) | 1,380円 | 1,280円 | どちらも外径48.6mm・厚さ1.8mm級 |
| 2m | 単管パイプ(2.4mm) | 1,480円 | 掲載未確認 | ナフコは外径48.6mm・厚さ2.4mm。コメリ特集ページでは48.6Φ単管は厚さ1.8mm共通表記 |
| 2m | メッキパイプ | 980円 | 998円 | どちらも直径25.4mm・厚さ1.2mm級 |
| 2m | 鉄筋系 | 598円 | 138円 | ナフコは丸鋼13×2.0m、コメリは異形丸鋼D13×2000mm |
| 3m | 単管パイプ(1.8mm) | 2,080円 | 1,780円 | どちらも外径48.6mm・厚さ1.8mm級 |
| 3m | 単管パイプ(2.4mm) | 2,180円 | 掲載未確認 | ナフコは外径48.6mm・厚さ2.4mm。JIS G3444の足場用鋼管表記あり |
| 3m | メッキパイプ | 掲載未確認 | 掲載未確認 | 両社公式サイトでは25.4mm系は1〜2m表記 |
| 3m | 鉄筋系 | 掲載未確認 | 掲載未確認 | 今回の公式サイト調査では同条件品を確認できず |
※ホームセンターで鉄筋・メッキパイプも比較検討しました。
※価格は撮影当時・調査時点の税込参考価格です。最新価格は店頭や公式サイトでご確認ください。
※メッキパイプと単管パイプは径や厚みが異なるため、単純な同等比較ではなく、同じ長さでの価格差の目安として掲載しています。
最初最初はメッキパイプも候補でしたが、2mで見ると、単管パイプ(1.8mm厚)との差額は
- ナフコで約400円
- コメリで約282円
ほどでした。
さらに、私が最終的に採用した2.4mm厚の単管パイプでも、ナフコではメッキパイプとの差額は約500円程度です。
この価格差で、外径48.6mm・肉厚のある単管パイプを選べるなら、強度面の安心感を優先したほうがよいと判断しました。
また、メッキパイプと単管パイプの強度を比較してみると、単管パイプは断面性能で約10倍以上あり、支柱としての安心感は明らかに上でした。
単価だけ見ればメッキパイプのほうが安いですが、数百円の差でここまで性能差があるなら、単管パイプを選ぶ価値は十分あると感じました。
▼詳しい比較 メッキパイプと単管パイプの強度を調べ比べてみた
【備考】メッキパイプと単管パイプの強度を調べ比べてみた

最初は、2.0mのメッキパイプも候補に入れていました。
ただ、寸法を比べてみると、メッキパイプは直径25.4mm・厚さ1.2mm、一方で単管パイプは直径48.6mmあります。
この差はかなり大きく、実際に断面性能を計算してみると、1.8mm厚の単管パイプでも、25.4mmのメッキパイプに対して、曲がりにくさの指標である断面二次モーメントが約10.8倍ありました。
2.4mm厚の単管パイプなら、さらに約13.9倍です。
つまり、同じ2mでも、支柱としての安心感はメッキパイプより単管パイプのほうがかなり上ということです。
特に寒冷紗は、風を受けると想像以上に支柱へ負担がかかるので、単に立てられるかどうかではなく、たわみにくさや曲がりにくさまで見ておいたほうが安心だと感じました。
また、単管パイプどうしで比べると、2.4mm厚のほうが1.8mm厚より約28%ほど断面性能が高く、より頑丈です。
ただ、今回検討している1.8mm厚の軽量単管は、商品説明で降伏点または耐力480N/mm²以上とされていて、材質自体もかなり強いです。
そのため、実際の遮光設備では、1.8mm厚でも十分実用的で、メッキパイプよりはるかに安心感があると判断しました。
結論としては、
「メッキパイプも候補だったが、強度面を考えると単管パイプのほうが明らかに有利。さらに価格差もそこまで大きくないなら、単管パイプを選ぶほうが納得感があった」
というのが、今回の判断です。
その結果、今年は
単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗 の方法で進めることに決めました。
参考値・算出根拠
※本比較は各メーカー公表寸法・JIS規格・丸鋼管断面計算式をもとに算出しています。
詳細な参考文献は記事末尾に掲載しています。
※ちなみに、単管パイプには1.8mm厚と2.4mm厚があります。※参考文献参照(ナフコの単管パイプ)
「1.8mmのほうが高強度なのに、なぜ2.4mmを選んだの?」という疑問については、補足で詳しくまとめています。
【補足】1.8mmより2.4mm厚の単管パイプを選んだ理由
単純にカタログスペックだけを見ると、
ナフコの1.8mm単管パイプは、降伏点・耐力の数値が2.4mm品より高く、
「1.8mmのほうが強いのでは?」と思いました。
ただ、ここで注意したいのは、
鋼材そのものの強さ と 支柱としての使いやすさ・安心感 は別ということです。
1.8mm品は、材料自体は高強度ですが、
肉厚が薄いぶん、パイプとしてはしなりやすくなります。
一方で2.4mm品は、鋼材の強度等級こそ1.8mm品より低いものの、
肉厚が厚いため、パイプ全体としてはたわみにくく、曲がりにくい という特徴があります。
実際、建設現場の足場など、
高い剛性と安定性が求められる用途では2.4mm厚の単管パイプが標準的に使われています。
つまり、
- 1.8mm=材料自体は高強度
- 2.4mm=支柱としての剛性・安心感が高い
という違いがあります。
今回のように、
風を受ける遮光設備の支柱として使うなら、
「最終的な強度」だけでなく「しなりにくさ」や「安定感」も重要です。
そのため今回は、
足場にも使われる2.4mm厚の単管パイプを選ぶことにしました。
そのうえで、イボ支柱+補強やメッキパイプは、
- 長い支柱が手に入りにくい
- 作業スペースを確保しにくい
- 広い面積では強度面に不安が残る
という点があり、畑全体を守る設備としては少し頼りない印象でした。
そしてもうひとつ大きかったのが、台風接近時や強風予報のたびに、寒冷紗を外して、また張り直す手間が発生しそうだったことです。
小規模で一時的な設備ならまだしも、広い面積を毎回張ったり外したりするのはかなり大変です。
そのため、この案は最終的に見送りました。
いちこ寒冷紗を張りたいの範囲は38m×20mくらいの範囲だもんね
【不採用】単管パイプ+寒冷紗
次に考えたのが、単管パイプを使って寒冷紗を直接張る方法です。
単管パイプを使えば、支柱の強度はかなり上がります。
イボ支柱よりもしっかりした構造が作れるので、安心感はかなり大きいです。
実際、去年のように「支柱が頼りない」という不安は、かなり減らせそうだと感じました。
ただ一方で、寒冷紗を単管パイプへ直接固定する構造にすると、
- 張り方の自由度
- 張り替えや補修のしやすさ
- 面積が広いときの施工性
という面では、もう少し工夫が必要だと感じました。
強度は十分でも、実際に使いやすいかという部分では、もう一歩検討が必要でした。
「実際に使いやすいか」という部分では、もう一歩検討が必要だと感じました。



寒冷紗をたるみなく張るためには、かなりの数の単管パイプが必要になるね。
【採用】単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗
そして最終的に有力になったのが、単管パイプで骨組みを作り、その両端にワイヤーを張って寒冷紗を固定する方法です。
この方法なら、支柱部分の強度は単管パイプでしっかり確保しながら、寒冷紗を張る部分はワイヤーで柔軟に調整できます。
つまり、
- 支柱の強度は単管パイプ
- 寒冷紗の張りやすさはワイヤー
という、それぞれの良いところを組み合わせられる構造です。
この方式なら、苗木の上にしっかり空間を作りやすく、風が抜ける構造にもできます。
去年のように、寒冷紗を近づけすぎて熱がこもる失敗も避けやすくなります。
さらに、
- 寒冷紗の張り替えや補修がしやすい
- 広い面積にも対応しやすい
- 必要に応じて微調整しやすい
というメリットもありました。
去年の失敗を一つずつ振り返っていくと、この方法が一番バランスよく条件を満たしていると感じました。
ここまで考えて出した結論
こうして比較してみると、
- イボ支柱+鉄筋補強やメッキパイプは、手軽だが強度や長さに不安がある
- 単管パイプ+寒冷紗は、強度は高いが張り方の自由度に課題がある
- 単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗は、強度・通気・張りやすさのバランスが良い
という整理になりました。
④ 最終的に選んだ方法
いろいろ検討した結果、今年は単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗でいくことに決めました。
理由はいくつかありますが、一番大きいのは、去年の失敗を一番きちんと潰せる方法だと感じたからです。
まず、単管パイプを使うことで、支柱の強度をしっかり確保できます。
去年のように「とりあえず立てた支柱」ではなく、最初から風を受けることを前提にした構造にできます。
次に、ワイヤーを使うことで、寒冷紗を苗木の上に屋根のように張りやすくなります。
これなら植物との間に十分な空間を作りやすく、風も通しやすい。
直接かけてしまった去年の失敗を避けやすくなります。
さらに、ワイヤー方式なら寒冷紗の張り方を調整しやすく、張り替えや補修のしやすさという面でも有利です。
あとから手を入れやすい構造のほうが、長く使う設備として安心です。
もちろん、イボ支柱よりは費用がかかります。
でも去年の経験を踏まえると、ここでまた中途半端な方法を選ぶほうが、結果的に高くつくと感じました。
安く済ませることより、ちゃんと守れることを優先する。
今年は、その考え方でいこうと決めました。
⑤ 次回予告
こうして、今年の遮光設備は単管パイプ+ワイヤー+寒冷紗という方向で進めることに決めました。
ただ、方向性が決まっただけでは、まだ実際には作れません。
次に必要になるのは、
- どんな形にするのか
- どれくらいの高さにするのか
- 支柱をどこに立てるのか
- ワイヤーをどう張るのか
といった、具体的な設計です。
次回は、単管パイプとワイヤーで作る遮光棚の設計図を公開します。
根拠として使用した文献・資料
- ナフコオンラインストア
小径メッキパイプ 25.4Φ×2m(25.4mm×1.2mm) - コメリドットコム
メッキパイプ 直径25.4mm×2m(25.4mm×1.2mm) - ナフコオンラインストア
単管パイプ 1.8mm 2.0m(48.6mm×1.8mm、降伏点または耐力480N/mm²以上) - ナフコオンラインストア
単管パイプ 2.4mm 2.0m(48.6mm×2.4mm降伏点又は耐力(N/mm2):355以上) - ESCO
φ48.6mm×2.0m 単管パイプ(2.4mm厚、STK500、断面二次モーメント9.32cm⁴、断面係数3.83cm³) - JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管 (閲覧参考:規格閲覧サイト kikakurui.com)STK500の機械的性質参照
- 日本製鉄カタログ / JFE資料
丸鋼管の断面二次モーメント・断面係数の計算式






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